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■第三回 スリランカ(3)「香辛料の歴史」
ペラデニヤ植物園の総面積は5.6km
2
である。1821年開設され、ジャワのボゴール植物園、シンガポール植物園と並び熱帯地域の三大植物園の1つである。植物の種類は4800種、徒歩で丸一日見て回っても、到底見切れるものではない。
園内を2分する形で、中央にはメインストリートが走り、入口近くに香料植物園がある。その中の一角にニクズク(Myristica fragrans)が40〜50本植えられている。
ニクズク科の植物はアフリカ、インド−マレーシア、太平洋諸島に約120種あり、ニクズクが代表種でマルク(旧称モルッカ)諸島が原産地である。高さ10〜20mになる常緑高木、果実は径3〜9cmの球形で、中心より縦に裂開し、種子は真紅の仮種皮に包まれている。
この仮種子はメースと呼ばれ、スパイス、薬用として珍重され、その高価さは世界一といわれている。種子はナツメグといい、肉の料理には最上のスパイスとされ、菓子の中でも、ドーナツ作りには不可欠のものとされている。成分はミリチシン、ピネン、オイゲノール、サフロールなどでその気品の高い香りが貴ばれている。薬用としては、消化不良、腹痛、下痢、媚薬として漢方で用い、日本では、苦味健胃薬に配合されている
。
フトモモ科のチョウジ(Syzygium aromaticum)も、やはりマルク諸島が原生地で、ニューギニアまで分布している。英名のクローブは、蕾の形が釘(clou)の形をしていることから、同様に丁子の丁は釘の形の意味から名づけられたものである。これも17世紀まではマルク諸島の特産で、ここからヨーロッパ、中国に運ばれた。中国では、紀元前3世紀すでに宮廷料理や薬用として用いられていた。中国経由で日本に当時運ばれてきたものは正倉院御物として現在でも保存されている。
チョウジは香辛料として利用される他に、古来より第一級の媚薬として用いられ、中世アラビアでは不老の薬として、毎日食べれば白髪にならないといわれてきた。風邪、咳、虫歯、眼病、胃痛、肝臓の薬として、特に防腐、殺菌力は香辛料の中では一番とされ、食肉文化圏では、肉の保存に欠かせなかった。
つづく
ニクズク
チョウジ
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